とても小さな手だった。
温かくて柔らかい小さな掌を己の武骨な手で、初めて触れたとき直感的に生涯この存在を守っていくのだと思った。
としちゃんとそうじ
「としちゃーん、起きないと遅刻するよー!」
「・・・・・」
「としちゃん?」
「・・・・としちゃんはやめろ、総司」
不機嫌な声色を隠さずに言った歳三に総司は、けらけらと笑うだけでさらっと流してしまう。
「としちゃんは、としちゃんでしょう?」
「わかった、もういい」
ひらひらと手を振り、さっさと部屋を出るように促すと、総司は肩を軽く竦めて部屋を出て行った。
歳三は、その華奢な背中を見つめて、そっと息をついた。
両親を一度に亡くした総司を引き取ったとき、総司はまだ五つの幼子だった。
歳三が二十三歳のときだ。あれから十年が経ち、総司は十五になった。
小さかった総司の手は、今はすらりとした美しいものへと成長している。
昔と変わらぬ温もりを残したまま成長した総司を歳三は、美しいと思う。
(・・・悪い大人になっちまったなあ)
あの華奢な身体を抱きしめたいと思ったのは、いつの頃だったろうか。
あの柔らかい髪を撫でて、艶やかな唇に何度触れたいと思ったことか。
その度に、罪悪感に苛まれ己を戒めてきた。
わかっているのだ。そんな感情を持つこと自体がおかしいということに。
歳三は、一人苦笑すると漸くベッドから起き上がった。
朝の陽光の中、総司はせっせと朝食の準備をしている。
柔らかな陽射しと、優しい朝食の香りは、理想の朝の風景である。
歳三は、緩む口元を誤魔化すように、味噌汁を一口啜った。
「としちゃん、今日は何時に帰ってくる?」
「七時には帰る」
「珍しく早いね」
「たまにはな」
晩御飯なににしよう、とふわふわ笑う総司を、歳三は優しい目で見つめる。
(頼むから、そのまま無邪気なままでいてくれよ)
それは、切実な願いだった。
いつか歳三の元を離れていってしまうその時まで、このままでいてほしい。
そうすれば、まだ己を抑えることもできるだろうから。
歳三は、総司の手首を掴んで、引き寄せた。
華奢な身体は、簡単に腕の中におさまってしまう。柔らかな髪に唇を寄せて、歳三はくくっと笑った。
総司の耳がそっと赤味を帯びていくのを、歳三は見て見ぬふりをする。
「・・・とし、ちゃん?」
「総司、今日は外で食うか」
「・・・うん」
総司の身を解放し、柔らかな笑みを浮かべた歳三に、総司は照れたように俯いた。
「駅前で待ってろ、迎えにいく」
「・・・うん」
こくりと頷いた総司の頭を撫でると、少し複雑な感情を滲ませた上目使いで睨まれ、歳三は苦笑した。
ぷくりと頬を膨らませ、拗ねた素振りを見せた総司は、そのまま背中を向けてしまう。
「・・・としちゃんって、意外と意気地なしだよね」
「・・・っ、黙れ!このクソガキが!」
ぴくりと青筋を立てた歳三に、総司はくすりと笑い、いってらっしゃい、とそれはそれは可愛らしく言ってのけたのだった。
End
とりあえずごめんなさい・・・!
いきなり現代パラレルな上、適当な設定でごめんなさい(あわわ)
実は、としちゃん、と呼ばせたかっただけです!笑
つーか、この歳さん我慢できてないですね!(残念すぎる)
そんで、総ちゃんは手を出してくれてもOKだと思っているいけいけどんどんな総ちゃんです。
総ちゃん→15歳
歳さん→33歳
うん、ありですよね(笑顔)